真性女性化乳房とは男性に乳腺の発達を認め、胸が膨らんでしまった状態のことです。
女性化乳房は乳腺の発達を認めず、皮下脂肪のみが原因となる偽性女性化乳房(ぎせいじょせいかにゅうぼう)と真性女性化乳房の2種類に分類されます。
今回は真性女性化乳房についてその詳細をお伝えします。
※偽性女性化乳房に関しては【偽性女性化乳房について】に詳細を記載しています。
真性女性化乳房(しんせいじょせいかにゅうぼう)とは
女性化乳房の9割以上は乳腺の発達を伴う真性女性化乳房です。
皮下脂肪の沈着のみの偽性女性化乳房は女性化乳房のうち1割未満ですので、女性化乳房のほとんどが乳腺の発達を伴っていると言えるでしょう。
真性女性化乳房の中でも乳腺の発達のみを認める場合と乳腺と皮下脂肪の両方が胸の膨らみの原因となっている場合があります。
乳腺の発達のみを認める場合は痩せ型の方、片方の胸だけ膨らんだ方、ボディビルダーの方などに認められる傾向があります。
一方、乳腺と脂肪の両方が存在する場合は、標準体型から肥満体系の方、思春期に肥満気味であった方に認められる傾向があり、こちらの方が割合としては多いです。
原因
生理的
男性の場合、女性化乳房になりやすい「新生児期」「思春期」「更年期」の3つの時期があります。
新生児期
新生児期はお母さんからの女性ホルモンの影響が残っているため、胸の膨らみを認めることがあります。
この場合は通常数週間で改善することがほとんどです。
思春期
思春期は男性ホルモンが一気に増えます。
男性の場合、男性ホルモンを原料として女性ホルモンを産生していますので、男性ホルモンが増えると女性ホルモンまで一緒に増える傾向があります。
また、思春期には女性ホルモンに対する反応も高まることが指摘されており、これらが原因となって乳腺の発育を認めることがあります。
思春期には半数以上の男性が女性化乳房の症状を経験しますので、珍しいことではありません。
【思春期の女性化乳房】にも詳細を記載していますので、参考にしてください。
更年期
30代以降は男性ホルモンが徐々に減ってきます。
そして更年期以降になると男性ホルモンの値がかなり下がってしまいますので、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスの崩れが生じます。
このホルモンバランスの崩れによって乳腺の発達が認められることがあります。
特発性
特定の原因が無いにもかかわらず、乳腺の発達を認める場合があります。
女性化乳房の約25%は特発性と考えられていますので、比較的頻度は高いと言えます。
両側の胸が膨らむ場合と片側の場合、いずれも起こり得ます。
薬剤性
薬が原因で乳腺の発達を認めることがあります。
身近なものではAGA治療薬、抗うつ剤、降圧剤(血圧の薬)などがあります。
医薬品以外では筋肉増強剤やお酒も乳腺の発達の原因となります。
詳細を【薬が原因となる女性化乳房について】に記載していますので、参考にしてください。
他疾患
別の疾患の症状として乳腺が発達してしまっている場合があります。
具体的には肝硬変、精巣腫瘍、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、ホルモンを産生する胃がん、肺がん、甲状腺機能亢進症などです。
これらを見落とさないためにも、女性化乳房の治療は専門の医療機関で血液検査を行うことが大切です。
詳細を【女性化乳房と病気の関係】に記載していますので、参考にしてください。
肥満
肥満であれば脂肪が原因なので偽性女性化乳房ではないのか?と思われた方も多いと思います。
しかし、肥満と乳腺の発達は関係があるのです。
男性は男性ホルモンであるテストステロンを原料として女性ホルモンを作っています。
この際、アロマターゼという酵素が脂肪に存在し、そこで女性ホルモンを作っています。
すなわち、肥満であるとアロマターゼの活性が高まりますので女性ホルモンが多く作られることになり、乳腺が発達しやすくなります。
ホルモンと女性化乳房に関しては【ホルモンと女性化乳房の深い関係】も参考にしてください。
さらに肥満と思春期女性化乳房の時期が重なると乳腺の発達はさらに加速するものと考えられます。
当院を受診される方のエピソードで「子供の頃太り気味であった。思春期に胸の膨らみが目立つようになり、大人になってダイエットしたが、胸の膨らみだけがとれない」という方が非常に多いです。
実際に診察してみると乳腺もしくは脂肪の中に線維状組織が広がっていることがほとんどです。
肥満であることは偽性女性化乳房にもなるのですが、乳腺の発達を伴う真性女性化乳房にもなりやすくなります。
治療
治療のタイミングは女性化乳房の原因を考慮しながら決定する必要があります。
思春期女性化乳房は自然に改善することが多いので、まずは経過を見ます。
自然に改善する場合は胸が膨らんでから2~3年以内ですので、それ以上の期間膨らみが残っている場合は手術を検討します。
また、乳輪の大きさをはるかに超える大きさのものや、学校生活に支障がある場合は個々の状況に応じて治療のタイミングを考える必要があります。
薬剤性、他疾患による場合はまず原因の除去が必要です。
すなわち薬の使用中止、他疾患の治療を先行させます。
原因の除去ができて半年以上乳腺が残存する場合や、薬の中止が不可能な場合は手術を検討します。
手術は乳腺が乳腺直下に限局しており、皮下脂肪もあまりない場合は局所麻酔で乳腺を摘出します。
乳腺の大きさがある程度ある場合や、皮下脂肪もある場合は全身麻酔で乳腺の摘出と脂肪吸引を行います。
詳細は【女性化乳房手術の実際~局所麻酔編~】 【女性化乳房手術の実際~全身麻酔編~】も参考にしてください。