脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は老人性イボとも呼ばれていますが、 老人性色素斑と並んで、よくできるシミの一つです。
見た目はイボなどのできものなのですが、顕微鏡レベルでは老人性色素斑とほとんど同じ構造ですので、シミに分類されます。
今回は脂漏性角化症についてその詳細をお伝えします。
脂漏性角化症の症状
典型的な脂漏性角化症は30代~40代以降に顔、手の甲など日光にあたりやすい場所にできます。

↑脂漏性角化症の典型例です
写真では分かりづらいのですが、茶色く背の低いドーム状に盛り上がったできものがあります。
これが脂漏性角化症です。
脂漏性角化症を一言で表すならば、「盛り上がったシミ」です。
色は通常のシミのように茶色いものから黒色のもの、周囲の肌と同じ肌色のものもあり様々なタイプがあります。
また、見た目の他に、脂漏性角化症は「かゆみ」を伴うことがあります。
これは脂漏性角化症の深い部分でリンパ球や毛細血管が増え、いわゆる炎症が起きているからです。
脂漏角化症は扁平なシミ(老人性色素斑)からできることもよくあります。
脂漏性角化症の原因
脂漏性角化症の主な原因は紫外線と加齢です。
長年の紫外線の影響が少しずつ皮膚のダメージとして蓄積し、脂漏性角化症を形成します。
したがって、日光にあたりやすい顔や手の甲に出来やすいのです。
しかし、紫外線の影響が少ない腹部などにも多発する場合があり、遺伝的な原因でできる脂漏性角化症も一定の割合で存在すると考えられます。
予防策として日焼け止めクリーム、帽子、日傘などによる紫外線対策が基本です。
ただし、紫外線対策の効果はすぐには出ません。
紫外線対策を継続することで10年先に違いが出てくると考えてください。
脂漏性角化症の治療
脂漏性角化症は盛り上がりのある“できもの”ですので、エルビウムヤグレーザーや炭酸ガスレーザーで除去(削る)します。
一般的には炭酸ガスレーザーで治療することが多いのですが、エルビウムヤグレーザーの方が炭酸ガスレーザーより組織の熱ダメージが少ないです。
私も昔は炭酸ガスレーザーで治療していたのですが、エルビウムヤグレーザーを使用するようになってからは術後色素沈着の頻度や程度が減ったと実感しています。
他の治療法として液体窒素があります。
あくまで私の個人的意見なのですが、液体窒素はお勧めできません。
レーザーであれば、ほぼ1回の治療で取れるのですが、液体窒素は何度か治療を繰り返す必要があります。
そればかりか長期にわたる色素沈着(茶色い痕)を残してしまっているケースを時々見かけます。
液体窒素は保険診療で治療を受けられるというメリットはあるのですが、「きれいに治す」という意味ではお勧めできないと考えています。
レーザー治療の流れと治療経過
① カウンセリング・診察
シミの状態を確認し、シミの種類を診断し、治療方法を提案します。
確実に診断するために、お化粧は全て落とした状態で診察します。

多発する脂漏性角化症

拡大写真
②レーザー照射
まず、局所麻酔で治療部位の麻酔をします。麻酔は注射ですので少し痛みがありますが、治療中に痛みを感じることはありません。
多発しているものはクリーム麻酔(エムラクリーム)を併用します。
直径1cmくらいの大きさの脂漏性角化症であれば、2~3分でレーザー治療は終了します。
お顔全体に脂漏性角化症を認める場合は2~4ブロックに分割し、日を分けて治療します。
治療部位は浅い擦り傷と同じ状態になっていますので、約10日間テープで保護します。

レーザー治療直後
③1~2日後
治療部位は少しジュクジュクしていますが、4日目位から乾いてきます。テープ保護のまま入浴、洗顔をしていただきます。
④10日後(術後再診)
治療部位の皮膚再生が終了して、治療部位もメイクができるようになります。
まだ治療部位の赤みがありますが、この赤みは数ヶ月以上かけて徐々に消えていきます。
まだ赤みのある皮膚は非常にデリケートですので、刺激を与えないように特に気をつけて下さい。
具体的には紫外線予防(日焼け止めクリームの使用)と物理的な刺激を避けるようにしてください。
刺激を与えすぎてしまうと一過性の色素沈着が2~3週間して出てきやすくなります。

レーザー治療後10日
⑤1ヵ月後(術後再診)
体質によっては一過性の色素沈着がおきます。見た目としては、茶色いシミが出来てしまったように見えます。
しかし、実際はシミができたのではなくレーザーのダメージによる色素沈着ですので心配はありません。(虫刺されや擦り傷がしばらく茶色くなるのと同じ状態です)
この一過性の色素沈着は顔であれば6ヶ月前後で消えます。顔より代謝が悪い手の甲や前腕は1年くらいかけて消えてきます。
⑥6ヵ月~12ヵ月後
一過性の色素沈着や赤みも消失し、レーザー治療の結果といえる状態になります。

レーザー後6か月
レーザー治療のリスク
脂漏性角化症の治療リスクは低いのですが、以下の2つが主なものです。
①一過性の色素沈着
・・・治療後1か月頃に治療部位が茶色く色素沈着を起こすことがあります。
またシミになったように見えるのですが、これはレーザーのダメージによる一時的な症状です。
平均6か月、長い方で1年くらいかけて消えます。
②治療部位の赤み
・・・治療経過の写真でもご覧いただいたようにしばらくは擦り傷が治ったような赤い跡が残っています。
この赤みも6か月から12か月ほどかけて消えてきます。
これらの色素沈着と赤みは良くなるまで時間が必要ですが、ほとんどがメイクでカバーできるものです。