脂漏性角化症の液体窒素治療、そのメリット・デメリット

脂漏性角化症(別名:老人性イボ)はシミの仲間ですが、シミのように平らではなく、盛り上がっています。

※こちらも参考にしてください老人性イボ・脂漏性角化症について

従って、通常のシミ・老人性色素斑とは治療法が少し違います。

脂漏性角化症の治療法はレーザー、液体窒素、切除が代表的な治療法です。

今回は脂漏性角化症の液体窒素による治療について解説します。

 

液体窒素治療とは

 

液体窒素とはマイナス200度近い非常に低温の液体状の窒素のことです。

この液体窒素をしみこませた麺棒などを患部に押し当て、凍傷を起こすことでイボなどのできものを除去します。

ウィルス性のイボや脂漏性角化症など皮膚のできものに対し、皮膚科でよく行われている治療法です。

 

液体窒素のメリット

 

まず、液体窒素治療のメリットについてみていきましよう。

 

健康保険が適応される

液体窒素治療の最大のメリットは健康保険が効くという点でしょう。

健康保険を適用した治療は、国が定めた料金体系の中で治療されますので、全国どこの医療機関で治療を受けても費用の差がほとんどありません。

また、患者さんが実際に支払う治療費は、治療にかかった総額の0~3割ですので、支払自体も安く抑えられます。

 

治療後の処置が必要ない

液体窒素以外の治療法、レーザーや切除はいずれも軟膏処置やガーゼ・テープによる保護が術後必要になります。

一方、液体窒素治療は基本的に治療後の処置が必要ありません。

 

液体窒素のデメリット

 

次に液体窒素治療のデメリットについてみていきます。

 

痕が残りやすい

痕を残さずに脂漏性角化症を除去するコツは、脂漏性角化症周囲の正常組織にできるだけダメージを与えないで除去することです。

液体窒素治療は目標とする細胞を低温にして壊死させるのですが、どうしても目標以外の周囲の正常組織まで凍傷を起こし、ダメージを受けてしまいます。

その結果、数か月から半年以上に渡って色素沈着が残りやすいというデメリットがあります。

 

複数回の治療が必要

脂漏性角化症が大きく、厚みがある場合は、脂漏性角化症の深い部分まで凍傷を起こすことができません。

そこで1~2週間ごとに治療を繰り返して少しずつ深い部分まで治療していく必要があります。

 

取り残し、再発の可能性

液体窒素治療はどれくらいの深さまで凍傷を起こしているか、はっきりとは分かりません。

術者の経験に基づいた勘で液体窒素を含んだ麺棒を患部に押し当てる時間や強さを決めます。

長い時間しっかりと麺棒を押し当てれば、できものを除去しやすくなりますが、周囲の組織も一緒にダメージを受けますので痕が残りやすくなります。

一方、時間が短かすぎれば治療効果も落ちるため、取り残しや少し残った細胞から再発しやすくなります。

顔など整容的な結果も求められる部位の場合、術者も痕になるのは避けたいという気持ちが強くなるため、少し控えめの治療になりがちです。

すると取り残しや再発の可能性が高くなってきます。

 

液体窒素とレーザーの比較

 

液体窒素治療とレーザー治療の特徴をまとめました。

液体窒素 レーザー
費用 保険 自費
術後処置 不要 必要
痕の残りやすさ 残りやすい 残りにくい
治療回数 数回 1回
取り残し 起こりやすい 起こりにくい

上図のように、費用面と治療後の処置に関しては液体窒素に軍配があがります。

しかし、治療回数や仕上がりの美しさを重視するのであればレーザー治療の方がお勧めできます。

 

まとめ

 

脂漏性角化症に対する液体窒素治療は健康保険の適応になれば費用は抑えることが可能です。

しかし、仕上がりの美しさ、治療回数に関してはレーザー治療の方が勝っています。

何を重視するかはっきりさせた上で治療法を選択すると良いでしょう。

 

※当院ではレーザー治療のみ行っています。