偽性女性化乳房(ぎせいじょせいかにゅうぼう)とは
偽性女性化乳房とは男性の胸が皮下脂肪によって膨らんでしまった状態のことです。
女性化乳房は乳腺の発達を伴う真性女性化乳房(しんせいじょせいかにゅうぼう)と偽性女性化乳房の2種類に分類されます。
※真性女性化乳房に関しては【真性女性化乳房について】に詳細を記載しています。
女性化乳房のうち真性女性化乳房が90%以上を占め、偽性女性化乳房は10%未満に認められます。
偽性女性化乳房になってしまったら
治療法は「痩せる(ダイエット)」か「脂肪吸引など局所の痩身治療」です。
しかし、「痩せる(ダイエット)」を断然お勧めします。
「な~んだ、そんなことか」と思わないでください。
「ダイエット」をお勧めするのは単に経済的だからという理由に留まらず、最も自然な胸の形(体型)を得ることができるからです。
また、安易な脂肪吸引は思わぬ落とし穴もありますので、その理由についても解説します。
ダイエットで自然な胸の形(体型)を得る
通常、皮下脂肪が胸だけに集まることはありません。皮下脂肪で胸が膨らんでいる場合はお腹や背中など他の部分にも皮下脂肪がたまっています。
皮下脂肪だけではなく、内臓脂肪もたまっているでしょう。
ここで、脂肪吸引で胸だけ痩せたらどうなるでしょうか?
非常にアンバランスな体型になります。
本当に脂肪だけで胸が膨らんでいるのならば、全身の脂肪を落としていくことで自然な体型になります。
ここで本当にと言ったのには訳があります。
最初にお伝えしたように偽性女性化乳房は女性化乳房のうち10%未満にしか認められません。
非常に少ないのです。
太っているからと言って偽性女性化乳房であると決めつけてしまうのは危険です。
なぜなら肥満は乳腺の発達を促すからです。
男性は脂肪に存在するアロマターゼという酵素が女性ホルモン(エストロゲン)を作っています。
エストロゲンは乳腺の発育を促しますので、肥満は乳腺の発育を促すことになるのです。
すなわち、太っていることは乳腺の発達を伴う真性女性化乳房の可能性も高めることになります。
ここに脂肪吸引の落とし穴が潜んでいます。
※ホルモンと乳腺の発達に関しては【ホルモンと女性化乳房の深い関係】を、ダイエットに関しては【胸の脂肪が落ちない原因と正しい対処法】も参考にしてください。
脂肪吸引の落とし穴について
脂肪吸引の落とし穴とは何でしょうか?
女性化乳房を脂肪吸引で治療するが故に陥りやすい失敗というものがあります。
乳輪の膨らみが残る
これは乳輪裏面に乳腺組織が存在する場合に起こります。
超音波検査など画像検査でしっかりと乳腺の有無を確認することで避けられるのですが、一般的な美容外科では超音波検査などを行うところは少数派です。
画像検査を行わない場合は、触診(手でさわって確認)のみで乳腺の有無を判断するのですが、触診だけでは乳腺の有無がはっきりしない場合がよくあります。
小さいながらも乳腺が存在する場合は、脂肪吸引のみでは膨らみ(特に乳輪周囲)が残ってしまいます。
脂肪吸引が不十分になる
明らかな乳腺は認められない場合でも、胸の皮下脂肪は非常に吸引しにくいことがあります。
これは手術で切開してみると分かるのですが、脂肪の中に線維状の硬い組織(結合組織)が広がっていることが原因です。
この結合組織は真性女性化乳房の残骸ともいえるものです。
真性女性化乳房で乳腺が発達した場合、乳腺が女性のものと似た充実性(かたまりになっている)のまま残ってしまう場合と、乳腺が退縮して脂肪と線維状の組織が混在した状態になる場合があります。
ある程度大きさがある充実性の乳腺はまず見落とされることは無いのですが、線維状の組織は女性化乳房の経験を積んだ医師でなければ術前の診察で見落としてしまうことがあります。
そして、偽性女性化乳房の診断のもと脂肪吸引を行うのですが、線維状の結合組織が邪魔をして十分に脂肪を吸引できないという結果になります。
脂肪吸引を行うにしても、手術でこの線維状組織を切除した後に脂肪吸引を行うとしっかりと吸引できます。
再発の可能性
乳腺組織を残したままにしておくと、再発する可能性が高くなります。
乳腺組織が残ったまま脂肪吸引のみを行ったケースでは約35%が再発したと報告する医学論文もあります。
乳腺が発達する原因は年齢的なもの(思春期、更年期)、薬剤、特発性などがあり、常に原因にさらされる可能性があると言えます。
乳腺が残っている場合、上記のような乳腺を発達させる原因にさらされた場合、乳腺が発達してしまい、再発ということになります。
特に更年期によるホルモンバランスの変化は誰にでも起こり得ることですし、特発性女性化乳房(特に原因が無い)は真性女性化乳房の25%を占めていることは考慮する必要があります。
これらの落とし穴は手術の前に超音波検査などの画像検査を行えば防ぐことが可能なのですが、女性化乳房の検査・診断に慣れていない施設がほとんどです。
特に脂肪組織に紛れている線維状組織や退縮して分かりづらくなった乳腺は大学病院のような高度医療機関でも見落としているケースを経験しています。
もちろん女性化乳房の経験が豊富な医療機関を受診すれば問題ないのですが、患者さん自身が診断できる方法がダイエットなのです。
「ダイエットして痩せたけど胸だけ痩せない」こういう場合は乳腺もしくは線維状組織が存在しますので、脂肪吸引だけでは結果が不十分になるか、後日再発する可能性を残してしまいます。