ホルモンとは体の中で、ある組織から別の組織へ情報を伝える物質です。
まだ解明されていない部分もあるのですが、生命維持のために欠かせない物質です。
ホルモンはお互いが微妙なバランスで成り立っており、わずかなホルモンバランスの崩れが体に大きな変化をもたらすことがあり、女性化乳房の原因となる男性の乳腺の発達も例外ではありません。
ここではホルモンと女性化乳房の関係についてお伝えします。
女性化乳房に関係するホルモン
生体内では多くのホルモンが活躍していますが、その中で女性化乳房と関連が深いものは「テストステロン」と「エストロゲン」と呼ばれるホルモンです。
テストステロン(男性ホルモン)
テストステロンはそのほとんどが男性の精巣で作られる男性ホルモンの一種です。
思春期ごろより量が増え、20歳前後がピークになり、30代以降は徐々に減少します。
テストステロンの主な働きは筋肉・骨格の発達、声変わりなど第二次性徴の促進、男性的な性格の形成(攻撃性、思考パターンなど)に関わります。
テストステロン自体が乳腺の発達に直接関係ありませんが、間接的な影響を与えることがあります。
エストロゲン(女性ホルモン)
エストロゲンは女性ホルモンの一種です。
男性の場合、先ほどのテストステロンを原料にエストロゲンを作っています。
女性ホルモンであるエストロゲンは男性にとっても生命維持や精神のバランスにおいて重要な働きをしています。
しかし、エストロゲンは乳腺の発達を促す性質がありますので、女性化乳房の発症に直接的な影響があります。
ホルモンが女性化乳房に与える影響
ホルモンは体の中で作られ、分解されていますが、様々な原因でバランスが崩れることがあります。
特にテストステロン(男性ホルモン)とエストロゲン(女性ホルモン)のバランスの崩れは女性化乳房の主な原因と考えられています。
年齢変化
年齢によってホルモンバランスは変化していきます。
女性化乳房は「新生児期」「思春期」「更年期」の時期に認められやすくなります。
新生児期
お母さんのエストロゲンが胎盤を通して子供に運ばれます。
新生児期の男の子はエストロゲンが一時的に増えた状況になりますので、乳腺が発達します。
新生児期の女性化乳房は、通常数週間以内に軽快します。
思春期
思春期に入ると男性ホルモンであるテストステロンが増加し、声変わりや性器の発達が始まります。
男性ホルモンの増加と女性化乳房は関係ないように思えるのですが、男性の場合、女性ホルモンであるエストロゲンをテストステロンから作っています。
男性ホルモンであるテストステロンが増えるということは、女性ホルモンであるエストロゲンの原料が増えることを意味します。
その結果、テストステロンの増加⇒エストロゲンの増加とういことになります。
エストロゲンは元々乳腺を発達させる作用を持っていますので、エストロゲンの増加によって乳腺の発育が促進され、女性化乳房になります。
思春期の女性化乳房に関する詳細は【思春期の乳腺肥大について】を参考にしてください。
更年期
男性のテストステロンは30代以降、徐々に減少します。
特に更年期に入るとテストステロンの減少が著名になります。
テストステロンの減少は集中力の低下、疲れやすさ、勃起障害など男性の更年期障害の原因となります。
また、テストステロンの減少は女性ホルモンが男性ホルモンより相対的に高くなることを意味しますので、女性化乳房の原因となり得ます。
乳腺の発達の他、更年期には皮膚弛緩、脂肪沈着などをある程度認めるため、60%以上の中高年男性に何かしら女性化乳房の症状を認めたというデータがあります。
疾患
肝硬変、性腺機能低下症、腫瘍(一部の胃がん・肺がん、下垂体腫瘍など)、甲状腺機能亢進症、慢性腎不全などの疾患はホルモンの増減に関わっています。
これらの疾患が原因となって女性化乳房を発症している場合があります。
こちらに関しては【女性化乳房と病気の関係】も参考にしてください。
薬剤
AGA治療薬、前立腺肥大治療薬、筋肉増強剤(アナボリックステロイドなど)、アルコールなども男性ホルモンのバランスを崩します。
女性化乳房の原因となっている割合は低いのですが、比較的身近にある薬剤も原因となることがあります。
詳細は【薬が原因となる女性化乳房について】【薬が原因となる女性化乳房について】を参考にしてください。
肥満
肥満と女性化乳房は非常に関連があります。
もちろん皮下脂肪が胸にたまることによって「偽性女性化乳房」と呼ばれる状態になることがありますが、偽性女性化乳房は女性化乳房の10%未満を占めるにすぎません。
最も影響があるのは「肥満によって女性ホルモンが増える」ことです。
この記事の前半部分でも記載しましたが、男性は男性ホルモンであるテストステロンから女性ホルモンであるエストロゲンを作っています。
このテストステロンからエストロゲンの合成は脂肪に存在するアロマターゼという酵素の働きを介して行われます。
肥満の場合アロマターゼの活性が高まりますので、エストロゲンの合成が促進され、乳腺の発達=女性化乳房へとつながります。