薬が原因となる女性化乳房について

私たちの身の回りには副作用として女性化乳房を発症する薬やサプリメントがあります。
女性化乳房を疑ったとき、一度薬やサプリメントが原因となってはいないかチェックすることも大切です。

今回は女性化乳房の可能性がある薬、サプリメントおよび対処法について解説します。

 

女性化乳房を発症する可能性がある薬について

女性化乳房が副作用として存在する薬は意外と多いものです。その中から比較的使用されることが多いものをピックアップしました。

医薬品

頻度不明のものもありますが、基本的には頻度が少ないことがお分かりになると思います。

女性化乳房の副作用がある薬品一覧

薬の種類 代表的な薬品名 頻度
AGA治療薬 プロペシア 不明
抗うつ薬 ドグマチール 0.1~5%未満
デパス 不明
パキシル 不明
抗てんかん薬 テグレトール 不明
抗アレルギー薬 セルテクト 不明
胃薬 ガスター 0.1%未満
タガメット 0.1~5%未満
降圧薬 アダラート 0.1%未満
カルスロット 0.1%未満
強心薬 ラニラピッド 0.1%未満
利尿薬 アルダクトンA 0.1~5%未満
高脂血症治療薬 クレストール 不明
前立腺肥大治療薬 アボルブ 1%以上
ザガーロ 1%未満

AGA治療薬(プロペシア)や抗うつ薬(ドグマチール、デパス、パキシル)は比較的若い年齢から使用することが多いためか、私が治療してきた薬剤性の女性化乳房の中では数が多い(もしくは治療を希望される方の人数が多い)印象があります。

医薬品以外

医薬品以外でも女性化乳房のリスクがあります。
医薬品より身近なものがありますので、チェックしておいて下さい。

筋肉増強剤

アナボリックステロイド、プロホルモンなどを使用することによって女性化乳房を発症する場合があります。

筋肉増強目的のホルモンは男性ホルモン(テストステロン)です。
男性ホルモンを体内で増やすことによって筋肉の発達を促します。

男性ホルモンが増えるのになぜ乳腺が発達して女性化乳房になるのか?
これはテストステロンを女性ホルモンであるエストロゲンに変える酵素(アロマターゼ)が体内に存在するからです。

普段から男性の体内でも男性ホルモン(テストステロン)→女性ホルモン(エストロゲン)の産生機序が働いています。

ここで人工的に男性ホルモンが体内で増えると自動的に体内で産生される女性ホルモンが増えてしまいます。

その結果として女性ホルモンに乳腺が刺激され、乳腺が発達します。

 

アルコール(お酒)

アルコール多飲も女性化乳房の原因となります。

長期のアルコール多飲によって体内の男性ホルモンが低下することが分かっています。
ホルモンバランスが崩れると結果的に乳腺の発達へとつながります。

アルコール多飲に関しては、アルコールの多飲によって肝硬変(肝臓が機能しなくなるほど不可逆的にダメージを負ってしまった状態)になるために女性化乳房になるとも一部メディアで伝えられています。

しかし、アルコールが原因で肝硬変になるまでには大量の飲酒を20年ほど続けなければなりませんので、肝硬変よりも先にホルモンバランスの崩れによる女性化乳房を発症すると考える方が自然でしょう。

 

大豆

大豆の中にイソフラボンという成分が含まれています。
このイソフラボンが腸内細菌(エクオール産生菌)によってエクオールと呼ばれる物質に変化し、女性ホルモンを活性化します。

しかし、エクオール産生菌は持っている人と持っていない人に分かれますし、イソフラボンを非常に大量摂取しない限りは女性ホルモンの活性化にもつながらないと考えられています。

通常の食生活ではまず影響ないと考えてください。

一方、Soy Protein(大豆たんぱく)の摂取は男性ホルモン(テストステロン)の低下を招くとの研究報告もあります。

当院で女性化乳房の治療を行った方の中には昔プロテインを摂取している時期があり、その頃に胸が膨らんできたとういうケースがたまにあります。

たまたま他の要素と重なったかもしれませんし、そのプロテインが大豆を主成分としたプロテインであったかどうかは定かではありませんが、昔はソイプロテインが主流だったとのことです。

大豆と女性化乳房の関連はまだ十分な検討が必要なのですが、何にせよ体に良いと言われる食物でも摂取しすぎは注意が必要です。

 

大麻(マリファナ)

大麻(マリファナ)の使用も女性化乳房を引き起こす原因となります。

 

薬剤性の女性化乳房になってしまったら

対処法は2つです。
① 原因と考えられる薬の使用を中止する
② 外科的に乳腺(および脂肪)を切除する

原因と考えられる薬の使用中止

薬による女性化乳房を疑った場合は、まず薬を処方された主治医と相談してください。
もし薬の中止が可能であれば、原因となる薬剤を中止することで女性化乳房が軽快もしくは解消します。

薬を中止してから数週間から数か月と必要な時間には幅があります。

しかし、薬の中止が不可能な場合や、薬を中止して半年以上しても女性化乳房の症状が改善されない場合は外科的治療を考えることになります。

思春期の女性化乳房について】でも記載しましたが、ある程度大きくなった乳腺が無くなってしまうのは限界があると考えています。

自然に軽快する場合は、発症から早期の乳腺があまり発達していない段階であれば可能であると考えています。

 

外科的治療

「薬の中止が難しい」「薬を中止してから半年以上経過している」「乳腺のサイズが大きい」このような場合は自然治癒の可能性が極めて低いと考えられます。

そこから先の治療は外科的治療が必要になります。

薬剤性の女性化乳房は基本的に乳腺の発達を伴いますので、脂肪吸引だけではなく乳腺を切除することが必要です。

手術の詳細は乳腺が比較的大きく、脂肪の沈着も認める場合は乳腺切除と脂肪吸引(全身麻酔)を行います。
乳腺が乳輪部分に限局しており、脂肪の沈着があまりない場合は乳腺切除のみで改善します(局所麻酔)。

詳しくは【女性化乳房手術の実際(全身麻酔編)】【女性化乳房手術の実際(局所麻酔編)】で解説していますので、参考にしてください。