女性化乳房の原因は
- 生理的(年齢変化によるもの):25%
- 特発性(原因不明):25%
- 薬など外因性:10~25%
であり、女性化乳房の大半が他の疾患とは関連がありません。
しかし、割合としては少ないものの、他の疾患が関連している場合があります。
他の疾患が原因の場合は、原因となる疾患をまず治療する必要があります。
もちろん健康上の観点からという意味もありますし、原因となる疾患が治癒することで女性化乳房が改善する可能性があるからです。
また、原因疾患を治療せずに女性化乳房のみを治療しても女性化乳房が再発する恐れがあります。
今回は女性化乳房を発症する可能性がある疾患についてお伝えします。
肝硬変
女性化乳房の約8%が肝硬変によるものと考えられています。
肝硬変とは
肝硬変とは長期にわたって肝臓に炎症が起こることによって、文字通り肝臓が硬く変化してしまい、肝臓としての機能を果たせなくなってしまう状態のことです。
肝硬変はその8割ほどが肝炎ウイルスによるものです。
よくお酒を飲みすぎると肝硬変になると言われますが、日本ではアルコールが肝硬変の原因となっている割合は1割ほどです。
肝硬変と女性化乳房
肝臓の役割は様々ありますが、その一つに女性ホルモン(エストロゲン)を分解する役割があります。
肝硬変によって肝臓が機能しなくなると、女性ホルモンを分解できなくなるため体内の男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れます。
それによって乳腺が発達し、女性化乳房を発症します。
性腺機能低下
女性化乳房の原因の約8%を占めています。
男性の場合、精巣で男性ホルモン(テストステロン)が作られています。
何らかの原因で、精巣で作られる男性ホルモンの量が減少すると女性化乳房の原因となります。
先天性の疾患
クラインフェルター症候群、アンドロゲン不応症、先天性睾丸欠損症などがあります。
この中ではクラインフェルター症候群が女性化乳房と関連性が強いです。
クラインフェルター症候群の頻度は男性500人に1人位に発症する染色体異常です。
男性ホルモン(テストステロン)の産生能力が低いため女性化乳房をはじめ、男性器や体毛が発達しないなどの症状がでます。
また、クラインフェルター症候群の約半数に女性化乳房が認められます。
後天的な原因
精巣外傷や精巣炎が原因で男性ホルモン(テストステロン)の産生能力が低下することがあります。
その結果として女性化乳房を発症する場合があります。
腫瘍(乳腺腫瘍以外)
女性化乳房の原因の約3%を占めています。
体のどこかに腫瘍が存在することで女性化乳房を発症することがあります。
代表的な腫瘍として
「副腎腫瘍」「hCG産生胃がん」「hCG産生肺がん」「hCG産生腎がん」「下垂体腫瘍」「精巣腫瘍」などがあります。
これらの腫瘍は体内の性ホルモンのバランスを崩すことがありますので、女性化乳房を伴うことがあります。
甲状腺機能亢進症
女性化乳房の原因の約2%を占めています。
甲状腺機能亢進症の10~40%の男性に女性化乳房を認めるというデータが出ています。
甲状腺機能亢進症の症状は「動悸」「多汗」「手の震え」「原因もなく痩せる」「疲れやすい」などがあります。
治療によりホルモンバランスが正常化すれば1~2か月で女性化乳房は解消します。
慢性腎不全
女性化乳房の原因の約1%を占めています。
慢性腎不全は男性ホルモン(テストステロン)の産生を抑制します。
また、続発的な精巣障害や栄養障害もみられるため、女性化乳房を発症する原因となります。
その他
上記以外に家族性女性化乳房(アロマターゼ過剰症)、栄養障害などが原因となることがあります。
家族性女性化乳房(アロマターゼ過剰症)はアロマターゼという男性ホルモン(テストステロン)を女性ホルモン(エストロゲン)に変換する酵素が過剰に存在します。
その結果女性ホルモンが体内に多く存在することになり、女性化乳房の原因となります。
まとめ
以上のような疾患が原因で女性化乳房を発症する可能性があります。
これらの疾患のほとんどは女性化乳房以外の症状の確認や血液検査で発見することが可能です。
従って、女性化乳房の診察の際には問診、視診、触診、画像検査の他に肝臓、腎臓、甲状腺、下垂体、性ホルモン値のチェックを行うことで隠れた疾患を見落とさないことが大切です。
原因となる疾患の治療を行っても女性化乳房の改善が認められない場合は乳腺切除など外科治療を考慮します。
参考資料:American Academy of Family Physicians