胸オペの典型的な合併症について
極力ゼロにしたいのですが、どうしても手術にはリスクが伴います。
胸オペに伴う典型的な合併症に関してお伝えします。
血腫(けっしゅ)
手術部位(乳腺除去部分)に血液が溜まって腫れてしまうことです。
症状
血腫のほとんどが、手術当日~翌日の間に形成されます。
まれに翌日以降に形成されるものもあります。
軽度の場合は少し膨らんでいる程度ですが、大きい血腫になると胸が水風船のように膨らみ、強い痛みを伴います。
治療
軽度のものは自然吸収を待つか、血腫が溶けてきたころ(術後7~10日頃)に注射器で吸引します。
大きな血腫は感染などのトラブルの原因となりますので、血腫除去手術が必要になることがあります。
予防するには
①安静を保つ
まず、手術当日の安静が大切です。
手術当日は不必要に出歩いたりしないようにしましょう。
②痛みのコントロール
また、痛みがある時はがまんせずに痛み止めを飲みましょう。
痛みが無いときに痛み止めを飲む必要はありませんが、痛いときは痛み止めを飲んでください。
なぜなら、痛いのをがまんしている時は血圧と心拍数がいくらか上がりますので、再出血しやすくなり、血腫形成の原因に少なからずなるからです。
③血圧のコントロール
高血圧がある方は高血圧の治療を行って血圧が安定してから手術を受けてください。
その他、過去に血が止まりにくかった経験がある方や、血が止まりにくくなる薬を飲んでいる方は血腫のリスクが高いので、診察時に必ず申告してください。
乳輪乳頭壊の血流不全
術後数日間は乳輪乳頭の血流が悪くなります。
症状
乳輪乳頭に黒いかさぶたのようなものができたり、乳輪縁の傷の治りが悪くなったりします。
血流不全がかなり強くでると、乳頭の一部が欠けてしまうことも稀ながら起こり得ます。
リスク
①過度な圧迫
術後、胸にバンドを巻いてもらっています。
手術当日は丸一日巻きますが、翌日からは日中だけ巻きます。
これは、夜間は圧迫を解除し乳輪乳頭への血行を促す目的があります。
②喫煙
タバコは皮膚の血の巡りを悪くし、壊死が高くなります。
特に乳輪乳頭壊死の可能性がある手術法を受ける場合は禁煙を徹底してください。
皮膚のたるみ
症状
乳腺摘出後に胸の皮膚のだぶつきが残ることです。
乳腺が無くなることで皮膚も縮んでくるのですが、それでも追い付かない場合に起こります。
リスク
①乳房が大きい
乳房が大きいとそれを包む皮膚面積も大きくなりますので、乳腺摘出後に皮膚が余りやすくなります。
②年齢
術後にどれだけ皮膚が縮むかは年齢による違いも大きいです。
当然年齢が若い方が皮膚の弾力性がありますので、術後の皮膚の収縮も期待できます。
一方、年齢が高くなるとどうしても皮膚の収縮が悪くなりますので、術後に皮膚が余りやすくなってきます。
同じような体型、乳腺の大きさの方でも30代以降の方と20歳前後の方とではどうしても仕上がりに差が出てしまいます。
③ナベシャツの使用
乳房を切除するまでは圧迫下着(ナベシャツ)を使用して日常生活を送っている方は多いのですが、実は手術という観点からはあまり良くないのです。
なぜなら乳房を下側に引き延ばすようにしてナベシャツで圧迫すると次第に皮膚が伸びてきてしまいます。
また、ナベシャツの使用歴が長いほど皮膚が伸ばされてくる傾向にあります。
傷跡
乳輪半周切開の傷跡は基本的にはあまり目立ちません。
ただし、傷跡周囲の乳輪の色が白く色が抜けることがあり、その場合はやや目立つ場合があります。
白く抜けた範囲が大きい場合はタトゥーでカバーすることも可能です。
胸の皮膚感覚異常
術後胸の感覚が鈍くなったり違和感が生じたりします。
この症状は大なり小なりほとんどの方が術後経験しています。
胸の皮膚感覚は術後1年位かけてゆっくりと回復してきます。
1年経ってもやや鈍い感じが残る場合もあるのですが、生活に特に支障は無い範囲です。
左右差
人間の体は必ず右と左では違いがあります。
乳腺の大きさ、皮膚の余り具合、乳輪の大きさ、骨格など・・・
そういった元々の条件によって若干の左右差は出ることがあります。
また、今までは乳腺に隠されて本来の胸の形が見えていなかった場合も、術後に肋骨がやや出ている、少し胸が凹んでいるなど本来の形が目に見えるようになることがあります。