ADMの症状と治療の詳細について

ADM(エーディーエム)というシミをご存知でしょうか?

「20代になって両頬のシミが目立つようになった」「肝斑と診断され治療したが良くならない」「光治療を繰り返しても効果が無い」そんな経験がある方はADMの可能性が疑われます。

ADMは適切な治療を行えば改善します。

今回はADMについて詳細をお伝えします。

 

ADMとは

 

ADMは1980年代に報告された比較的新しい概念のシミです。

あまり目立たないものも含めると、割とよく見かけるシミの仲間です。

ADMは後天性真皮メラノサイトーシス、遅発性両側性太田母斑などと呼ばれることもあります。

以前は太田母斑というアザの仲間として扱われていた時期もありましたが、現在は太田母斑とは切り離されて扱われています。

※ADMはAcquired Dermal Melanocytosis の略です。

 

 

ADMの症状

 

ADMの典型的な症状は、20歳~30歳頃、両頬に茶褐色の斑点状のシミが認められるようになります

両頬が最も多いのですが、まぶた、額、鼻などにも出現することがあります。

ADM 頬、こめかみ

頬、まぶた、こめかみのADM

通常のシミ(老人性色素斑)より若いころに出てくることが多く、色や形も見慣れれば特徴があります。

治療を行う上で、ADMと見分けなければならないシミは「肝斑」と「老人性色素斑」です。

特にADMと肝斑は治療法が全く違いますのできちんと見分けることが大切です。

 

ADMと肝斑との違い

ADMはややくすんだような特徴的な色をしていることが多いです。

しかし、一目見て色だけでは分かりづらいこともあり、その場合はシミの範囲に注目します。

まず「まぶた」に注目します。

肝斑はまぶたにはできませんので、まぶたにも色素斑がある場合はADMの可能性が高くなります。

次に額(生え際近く)、鼻にも色素斑がないかチェックします。

頬以外にも上記の場所に色素斑を伴うことがあるのがADMの特徴です。

 

ADMは診断が大切

ADM、肝斑、老人性色素斑は見た目が似ている場合があり、診断が難しい場合もあります。

治療法の詳細は各治療法のページに譲りますが、それぞれ治療法と治療経過が異なり、適切な治療法を選択しないと「いつまでたってもシミが消えない」「更にシミが悪化した」などということになってしまうのです。

例えばADMを肝斑と見間違えて治療した場合、ADMは肝斑の治療には全く反応しません。

すなわち「治療しているのにいつまでたってもシミが消えない」ということになります。

次にADMを老人性色素斑と見間違えてしまった場合です。

治療法としてフォトフェイシャルなどの光治療を選択した場合、これもADMは反応しませんので効果が得られません。

このように診断を間違えてしまうと治療結果がついてきませんので、診断が非常に大切です。

ただし、治療法が全く異なるADMと肝斑の混在は約20%位とされており、その場合はどう治療計画をたてるかという点も大事になってきます。

 

何はともあれ、まずは診断が大切です。

 

ADMの原因

ADMのはっきりとした原因はまだ不明です。

炎症紫外線女性ホルモン妊娠などの影響ががきっかけになることが示唆されています。

ただし、家族暦を認めることがあるため、遺伝的な要素もあると考えられます。

 

ADMの治療法

 

ADMは治療に良く反応します。

ただし、Qスイッチレーザー治療のみ効果が得られます

また、治療経過も特徴的で、レーザー照射後1~2ヶ月は全く良くなっていないように見えることがよくあります。

通常2~3ヶ月ほどして少しずつ薄くなりはじめ、治療から約1年かけてゆっくりと薄くなります

レーザー照射から1年かけて効果がでてきますので、あせらずにじっくり待つことが大切です。

ADMの特徴的な治療経過のことを理解していないと、レーザー照射から数ヶ月で2回目、3回目の治療をしてしまい、無駄に治療の時間と費用をかけるばかりでなく、色素沈着の増悪や色素脱失といった合併症を起こしやすくなります

 

ADMのレーザー治療の流れ

 

ここからはADMの具体的な治療の流れと経過をお伝えします。

 

①診察
シミの状態を確認し、シミの種類、最適な治療法について診断します。
特にADMは顔全体を診察することが必須ですので、お化粧は全て落とした状態で診察します。
ADM 治療前

ADM 治療前

 

②レーザー照射

照射予定範囲を麻酔クリーム(エムラクリーム)で麻酔をします。

レーザーの照射はパチンと輪ゴムで強く弾かれる感じです。

レーザー照射部位はテープで保護します。

 

③1日後

レーザーをあてた部分が薄いかさぶたになります。

洗顔、入浴、メイクも可能ですが、かさぶたを無理にはがさないようにそっとしておいてください。

ADMレーザー治療によるかさぶた

レーザー治療によるかさぶた

④7~10日後(術後再診)

この頃にかさぶたが剥がれます。

かさぶたがはがれた後は赤みのある皮膚になります。

この時点で消えているシミもありますが、ADMは通常そのまま消えずに残っています。

かさぶたがはがれた後の皮膚は非常にデリケートですので、治療部位に刺激を与えないように特に気をつけて下さい。

具体的には紫外線予防(日焼け止めクリームの使用)、こすらないを徹底してください。

刺激を与えすぎてしまうと一過性の色素沈着が2~3週間して出てきやすくなります。

 

⑤1ヵ月後(術後再診)

約50%の確率で一過性の色素沈着がおきます。一過性の色素沈着がおきた場合は術前よりシミが濃くなったような印象を受けます。

かえってシミが悪化したように見えるのですが、レーザーのダメージによる色素沈着ですので心配はありません。(虫刺されや擦り傷がしばらく茶色くなるのと同じ状態です)

この一過性の色素沈着は6ヶ月前後で消えます。

レーザー治療後 1か月

レーザー治療後 1か月

上の写真はレーザー治療後一か月のものです。

色素沈着は起こしていませんが、まだADMは残っています。

 

⑥3ヵ月~12ヵ月後

一過性の色素沈着や赤みは約半年でほぼ消失します。

しかし、ADMは非常にゆっくりと消失してきます。術後3ヶ月くらいで少し治療効果を実感し、6ヶ月でだいぶ薄くなったと感じられるようになります。

更に術後1年くらいまでかけてゆっくりと薄くなってきます。

レーザー治療後1年

レーザー治療後 1年

薄くなってきている途中にレーザー照射などを繰り返すことはかえって色素沈着の遷延や白斑の出現につながることから、当院では術後1年間はレーザーの再照射は行いません。

1回の治療で約80%ほど改善しますので、レーザー治療から1年たった時点で少し残っている部分の治療を希望される場合は2回目の治療を行います。

もちろん、1回の治療で満足いく結果が得られれば治療は終了です。

 

まとめ

 

ADMは比較的若い年齢で両頬に出現するシミの一種です。

Qスイッチレーザーで改善するのですが、治療結果が出るまで時間がかかりますので、焦らずに待つことが大切です。